もしも船外活動中に真っ暗な宇宙空間へ漂流してしまったら……このぞっとする考えはどの宇宙飛行士でも、脳裡をよぎるものでしょう。
さらに、宇宙服が破れて生身で宇宙空間に晒されることになったらどうなるのでしょうか?
SF映画などでは血液が沸騰し、さらには体が凍って死にいたる描写が描かれていますが実際にはそうではないようです。
人間は宇宙空間でどうなってしまうのでしょうか?生還することはできるのでしょうか?
今回は人間が生身で宇宙空間に放出されるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
NASAなどの宇宙機関は宇宙飛行士の漂流を防ぐための安全策を講じています。
たとえば、宇宙飛行士が国際宇宙ステーションの外へ出る際は26メートルの巻き取り式スチール・ケーブルで宇宙船に自分を繋ぎ止めています。
500キログラムで引く力にも耐えられる強力な命綱です。
万一、この強靭な綱が切れることがあったとしても、宇宙飛行士はセイファーを使うことができます。
これは、船外活動中に装着する非常用の小型噴射飛行装置であり、自由飛行を可能にします。
しかし、SAFERが故障したり、宇宙飛行士が意識を失っていてSAFERを操作できなかったりした場合には、宇宙ステーションの仲間たちが救助作戦を開始することが唯一の希望となります。
とは言え、漂流する宇宙飛行士を助けに行けるような宇宙船は現時点では存在しないため、救助活動は困難なものとなるでしょう。
もし、命綱が切れ、飛行装置が故障し、仲間たちの救助作戦が失敗したら、あなたが離れてしまったときにかかっていた力が何であれ、その力の作用する方向に漂っていきます。
完全な無重力状態で、おそらく体が回転し、蹴ったり犬かきをしたりしても戻ることはできません。
地球の引力により、あなたはこの惑星を周回する軌道から抜け出せないことでしょう。
宇宙服が破れていなければ、酸素供給が尽きるまで最長8時間の間、この恐ろしい時間を体験することになります。
けれども、あなたが飛ばされる原因となった事故によって宇宙服が破損してしまった場合は、宇宙漂流はずっと早く終わることになります。
まず、私たちの身体から全ての空気が流出し始めます。身体中の穴という穴を塞いだとしても、それは無駄な努力となります。
そして、真空にさらされて10秒〜15秒で気絶することでしょう。これは肺の血液が脳に流れ出すことによるもので、吸う空気がないため脳が空気を求めて苦しみ始めるのです。
おそらくこの間に、真空に直接晒されている唾液や涙などは沸騰し始めており、あとは予想通り命を落とすこととなります。
別の可能性としては、宇宙ステーションから特定の角度と速度で飛ばされることで、地球に衝突する進路を取ってしまう可能性もあります。
けれども、地表近くまで到達することはありません。なぜなら、落下する隕石と同様に地球の大気圏で燃え尽きてしまうためです。
幸いにも、これまでに宇宙漂流するという恐ろしい目に遭った人はいません。
過去に危険に陥った例はいくつかありますが、装着していた安全装置のおかげで惨事は免れています。
とはいえ、あなたが宇宙旅行中に不慮の事故に巻き込まれたと想像してみてください。
命を落としてほぼ永遠に宇宙空間を漂う最期と、流星となって儚く散る最期、あなたはどちらを希望しますか?