海中を漂う殺し屋「サメ」。サメは50mプールに垂らされた一滴の血液でさえも反応できる嗅覚を持ち、鋭い歯によって獲物を引きちぎることで知られています。
また、サメの目にはタペータムという光を眼球内で反射する機能が備わっており、人間が暗闇にしか見えない光がわずかな場所であっても、サメは物を見ることができると言います。
では、この海のハンターに人間が襲われるとどうなるのでしょうか?そして、万が一襲われた場合にはどう対処すればいいのでしょうか?
今回はサメに喰われるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
地球上にサメは500種類以上いると考えられています。しかし、実際には人間を襲う可能性のあるサメはたったの6種類ほどしかいません。また、それらの人食いザメと呼ばれるサメたちは人間を好んで捕食するわけではなく、不意を突かれて彼らが恐怖を感じない限り襲われることは少ないと言われています。
代表的な人食いザメとしては、ホオジロザメ、シュモクザメ、イタチザメなどがいますが、今回はその中でもホオジロザメに焦点を当てて話を進めたいと思います。
2020年7月31日、オーストラリアに住むフィル氏がサーフィンをしていたところ、約4.9メートルの巨大なホオジロザメにサーフボードから押し倒され、脚に噛み付かれたと言います。彼はその時、サーフボードをサメの口に押し込み、顔にパンチを食らわせて応戦し、強固なホオジロザメの顎から逃れたのです。
しかしながら、彼は脚に食い付かれたことにより傷を負ってしまいました。当時、近くの水中にいた三人の友人が彼をロングボードに引き上げ、付近の病院に運んだため、足の63箇所を医療用ホチキスで留めるという重傷を負ったものの、命を落とすことはありませんでした。
では、実際にホオジロザメに襲われるとどうなるのでしょうか?
まず、ホオジロザメに襲われやすい人の特徴についてお話しましょう。ホオジロザメは、目が悪いため、海水浴をする人間がバチャバチャと水しぶきをあげていると、エサだと勘違いして襲ってくることがあります。特に早朝や夜間ではさらに視界が悪くなり、人間をエサと間違えやすくなるから要注意です。
また、海の中で血を垂らしたり、しょんべんを垂らすのは危険な行為です。特にしょんべんは血液とは比較にならない量が流れるため、匂いに誘われて近づいてくる可能性があるのです。
次にホオジロザメはどのようにして獲物を捕食するのでしょうか。
ホオジロザメの体長は 4メートルから6メートルで、1トン近い体重がありますが、獲物に襲い掛かるときのスピードはもの凄く、また、海面の上を数メートルジャンプできるほどの驚異的な運動能力を持っています。
獲物からしてみれば、ホオジロザメが視界に入った次の瞬間には噛みつかれていたということになるでしょう。
そして、ホオジロザメの噛む力は約2トンと言われ、これはライオンの5倍ほどの力に相当します。このとてつもない力と鋭いのこぎりのような歯が相まって獲物を生きたまま食いちぎることになるのです。
いうまでもなく獲物は、一瞬で切断され、肉の塊となります。切断されたこの肉の塊は、ホオジロザメの巨大な胃袋に飲み込まれ、消化されるのです。
ここで、もし人間がホオジロザメの餌食になったとして、噛まれた箇所が胴体である場合を想定してみましょう。この際、ひと噛みで胴体が切断されてしまうため、内臓がそこら中に散らばり、大量の出血も見受けられるため、ほぼ即死に近い状態になることでしょう。
喰われた人間は、急激に脳の血液が無くなってしまうため、痛みを感じる間もなく意識が消えてしまうことでしょう。その点では胴体を噛まれる方が楽に死ねるのかもしれません。
足を噛まれた場合は絶望的です。なぜなら、切断された足がホオジロザメの巨大な胃袋に飲み込まれ、残った部分は海に投げ出されることとなるためです。ただし、人間はホオジロザメの好みのエサではなく、一回噛んでも吐き出すことが多いようです。
そのため結局は、一度飲み込まれた足部分も吐き出され、赤く染まった海と吐き出された自身の一部を眺めて終わる 最後になるかもしれません。他の海洋生物や海鳥などのエサになってあっという間に消滅していくことになります。なんとも恐ろしい末路です。
最後に、ホオジロザメに襲われそうになった場合での対処法について伝授しておきましょう。
まず、サメが襲ってきたときは、サメと自分の間に何か物を置くとよいでしょう。例えば、サーフボードやボディーボード、救命具などとにかく何かをサメと自分の間に置くことです。
そして、サメが通り過ぎるとき、どこでもいいのでサメの身体を渾身の力で殴ってください。そうすることでサメが驚き、サメから逃げる時間を稼ぐことができます。
サメが噛んできて離さないときは、サメの敏感な部分である、鼻か目、エラをできれば硬い物で強く突いてください。ただ、これは本当に最後の手段です。ホオジロザメのような巨大で俊敏なサメに襲われた場合ではこれらの対策では無理かもしれません。とにかく襲われそうになるはるか前に逃げることが重要です。
とはいえ、サメに命を奪われる確率はそれほど高くありません。アメリカ人の死因を調べた統計調査によれば、1959年から2010年までの約50年間で、サメに襲われて死亡した人はたった26人ということです。
同じ期間に落雷が原因で亡くなった人は1970人ですので、サメに襲われて死ぬ確率がいかに低いかが分かります。
ホオジロザメも含めてサメにとって本来、人間はエサではありません。サメが好むエサはオットセイやアザラシなどの体脂肪がたくさんある動物です。ですから、サメに不用意に近づいてサメをおどかすようなことをしないようにすればサメの餌食になるような心配はほとんどないと言ってもいいのです。