私たちが住む惑星である地球と比較すると、太陽はあまりにも大きな存在です。
太陽の直径は、地球のおよそ109倍。仮に太陽が直径30cm程のスイカと同じ大きさだとすると、地球は一粒のゴマほどの大きさしかありません。このように、宇宙において大きさの違いは文字通り桁違いであることが多いでしょう。
そしてもちろん太陽も、現在の天の川銀河の恒星の中では上から数えた方が早いほど大きな星ではあります。が、太陽でさえも全く歯が立たないほどの大きさを持つ恒星はいくつも存在するのです。
では、この宇宙で最も大きい星は、どの星なのでしょうか。これらの星は、どうしてここまで大きくなれるのでしょうか。
今回は宇宙に存在する巨大な星々についてご紹介したいと思います。
まずは、恒星の大きさはいかにして決まっているのかについてご紹介します。恒星とは、自ら発光し、かつ重力による収縮に反する圧力を持っている天体のことです。私たちが目で見ることのできる星々のうち、太陽を含めそのほぼ全てが恒星です。
恒星ができるためには、まずはガスが一か所に集まる必要があります。ガスがある程度集まると、重力によりさらに周りのガスを取り込み、少しずつ成長していきます。この状態の天体を、原始星(げんしせい)と呼びます。
原始星が成長するごとに、その重力が強まり、中心部の温度と圧力が上昇していきます。中心部の温度が摂氏数百万度ほどに到達すると、中心部で水素原子同士が融合してヘリウムを生成するようになります。核融合反応の開始、すなわち恒星の誕生です。
核融合反応で発生したエネルギーにより、中心部では外に広がろうとする力が発生します。しかし、際限なく広がることはできません。外に広がろうとする力と反対方向に、星自体の重力が働くのです。
核融合によるエネルギーと、星自体の重力が丁度釣り合うサイズこそが、恒星の大きさなのです。分かりやすいですね。そのため、大きな恒星を作ろうと思うと、核融合のエネルギーを大きくする必要があります。
核融合のエネルギーが大きい恒星は、燃料である水素を大量に保有しています。一般的には重い恒星ほどサイズも大きいのはこのためです。しかし、恒星が重いほど重力も大きくなるため、たいして恒星は大きくなりません。
最も重い恒星は太陽の200倍以上重いですが、直径は太陽の30倍から40倍ほど。水素を核融合している限りは、太陽の数百~数千倍などといったとてつもない大きさにはならないのです。
それでは、よりさらに大きな恒星は、なぜそこまで大きくなれるのでしょうか。答えは、水素以外の原子による核融合が起きているためです。
恒星は、中心部の水素をヘリウムに変換することで核融合のエネルギーを獲得していますが、中心部の水素を消費しつくしてしまうと重力に対抗するためのエネルギーがなくなってしまいます。
重力によりヘリウムでできた中心部がさらに圧縮されると、今度はヘリウムが核融合し炭素や酸素を生成するようになります。より重い恒星では、炭素、酸素がさらに重いケイ素や硫黄などの原子に核融合する反応も進行します。
これらの核融合反応は、水素の核融合よりもはるかに大きなエネルギーを生成します。しかし、恒星の重さ、つまり重力の力は水素の核融合が進行していたときと比べて、ほとんど変わっていません。
そのため、核融合のエネルギーが重力を上回り、星が大きくなるのです。私たちの太陽も、およそ50億年後には水素を使い果たし、現在の200倍以上の大きさになると予想されています。
では、太陽より質量が多い恒星が水素を使い果たしたときは、どこまで大きくなるのでしょうか。
意外にも、太陽の百倍重い星が中心部の水素を使い果たしたとしても、太陽の2000倍という大きさになることはありません。核融合のエネルギーが大きすぎて、表層の水素を吹き飛ばしてしまうのです。
最も大きくなる恒星は、誕生時点では太陽の数十倍の重さを持つと考えられています。例えば、少し前まで宇宙で最も大きい星として知られていた、たて座UY星という恒星を見てみましょう。
地球からおよそ9500光年離れたこの恒星は、かつては人類が発見した最大の恒星であるとされていました。現在のたて座UY星の重さは、太陽の7倍から10倍ほどと推定されています。
しかし、凄まじい勢いで表層の物質を吹き飛ばしているため、かつてはさらに重かったことは間違いないでしょう。
現在、毎秒およそ3000兆トンの物質が宇宙空間に放出されていると考えられています。繰り返しますが、1秒あたりです。大きくなりすぎて、表層の物質を繋ぎ止めるだけの重力が足りないのです。
その直径は、太陽の1500倍から1900倍程度と見積もられています。ここまで予想に開きがあるのには、3つ理由があります。
一つ目は、距離です。いくら太陽の1500倍以上大きいといっても、距離が9500光年あれば正確な観測は困難です。
二つ目は、巨大な恒星は表層の物質を絶えず吹き飛ばしているため、正確な表面が分かりにくいことです。不安定すぎて、そもそも球形ではないこともあります。
そして三つ目は、恒星の大きさが絶えず変化していることです。事実、たて座UY星は変光星という、明るさが時間により変化する星であることが知られています。
このような星の内部では、場所によって異なる種類の核融合反応が進行しています。例えば、あるところではヘリウムが炭素に、あるところでは炭素が酸素に変化しているかもしれません。
ある場所で進行していた核融合反応の燃料が無くなると、核融合は止まりますが、代わりに他の種類の核融合が始まる可能性があります。
核融合反応の種類により、放出するエネルギーが異なるため、それに伴い明るさも、そして重力と釣り合う大きさも異なります。つまりは、これほどまで大きい星は、核融合反応を全く制御できていないのです。
さて、先程お話しした通り、現在ではたて座UY星は最大の星ではないとされています。現状、宇宙で最も巨大な星とされている星は、地球からおよそ20000光年離れたスティーブンソン2-18。
その直径が直接測定されたことはありませんが、表面の温度から計算すると太陽の2150倍という数値が計算されています。太陽の2150倍。
大きすぎて実感が湧かないことでしょう。太陽がスイカほどの大きさ、直径程度30cmだとすると、スティーブンソン2-18の直径は650mほど。
また、仮にスティーブンソン2-18を太陽の位置に置くと、内惑星は全てその内部に埋まるのはもちろん、木星をも飲み込み、土星の軌道付近にまで到達します。
ですが、スティーブンソン2-18がこの大きさを保つことができるのは、宇宙全体の歴史から見るとほんの少しの間だけです。やがて表面の物質を放出していき、中心部にどんどん重い原子を生成していく過程で、小さくなっていくのです。
そして最後には、超新星爆発を起こし、次の世代の星の材料と化すことになります。人類の何万倍、何億倍ではきかないほど巨大な星がごろごろと存在している広大な宇宙。
我々が、顕微鏡でミジンコを観察するように、何者かがあなた方を顕微鏡で観察しているかもしれません。そして、さらにその何者かさえも…おっと誰か来たようです。