オーストラリア全土で森林火災が激しさを増す中で、専門家たちはオーストラリア固有の動物たちが深刻な被害を受けていることを懸念しています。
シドニー大学の研究者らは、9月に始まった火災によって4億8千万匹を超える動物が犠牲となったとみています。オーストラリア東海岸に沿って起きた火災で犠牲になったコアラは8,000匹にものぼり、これはニューサウスウェールズに生息するコアラのおよそ3分の1に匹敵する数です。
「詳細を知ることができるのは、火災が沈静化し被害状況の調査が行われたあとになるでしょう。」とオーストラリア環境大臣、スーザン・リー氏は Australian Broadcasting Corporationへ語っています。
コアラは最も被害を受けた動物のひとつで、ゆっくり動く習性と、今回の火災で消滅した森林が生息地だったことがここまで被害が広がった主な理由として挙げられます。今月の報道ではコアラの悲惨な状況や、他のオーストラリア固有の有袋動物が混乱し、脱水症状や重度のやけど、焼死した姿で発見されたことが報じられました。
「火災は非常に熱く燃え広がるのが早いため森の中で死亡した動物はかなりの数にのぼりました。かなり広範囲にわたりいまだ燃えていますので、おそらく死体が見つかることはないでしょう。」と自然保護協会の生態学者であるマーク・グラハム氏はガーディアン誌の問い合わせに対して回答しています。
ボランティアは野生動物保護団体とともにカンガルーやクスクス、フクロネコなどコアラ以外の固有動物たちが火災から逃げ惑う姿も目撃しています。
正確な数はいまだ不明ではありますが、多くの人間も犠牲となっています。
状況はますます悪化しているように見えますが、救助体制も整えられています。ニューサウスウェールズにあるポートマッコーリーコアラ病院という小さなコアラ専門病院はクラウドファンディングのサイトを利用し220万オーストラリアドル(1億6千万円)以上を調達しました。ソーシャルメディアではオーストラリアの野生動物たちを助けようとするボランティアたちの写真や動画で溢れています。
一方、火災は鎮火することなく5つの州にまたがって400万ヘクタール以上を焼き尽くしました。オーストラリアでは森林火災が夏季毎年予測されますが2019~2020年の森林火災は特に大規模なものとなりました。おもに熱波が原因と言われ、6つの州すべてで気温40度に達しました。
気象学者はその原因を、ダイポールモード現象(IOD)いうあまり知られていない大気海洋現象によるものだとしています。西インド洋の海面温度が東部では下がり西部では上がる現象でオーストラリアの気候に深刻な影響を与えるのです。
幸運にも、オーストラリアのスコット・モリソン首相は世論の批判を受け、数ヶ月にわたる灼熱地獄に対処するために休暇先のハワイから帰国してきたとのことです。
reference:iflscience