6月7日、南アフリカの海岸で深海に住む巨大生物が死の淵にあるところを発見され、人々を驚かせました。この生物は体長4.19m、海岸に打ち上げられた数少ないダイオウイカの一匹で、おそらく成長途中にある個体です。
ブリタニア・ベイを散歩中にこの様子を撮影したリチャード・デイビス氏がニュース24に語ったところでは、巨大イカを転がして海に戻そうとしたものの重すぎて動かず、「尊厳死」に任せるしかなかったとのことです。「死にかけていたのが分かって悲しかったです。まだ墨を吐いていて、触手を触ると手に吸い付いて取るのが大変でした。」デイビス氏によるとダイオウイカの重さは200kgから300kg位あったようで、その後イジコ博物館の海洋生物学者が回収し、分析を続けています。
ダイオウイカは大変捕まりにくい生き物で、その姿が初めて撮影されたのは2006年のことです。水深300mから1000mの深い海に住み、体長20mに達すると考えられるものの寿命は通常5年位しかありません。この個体の場合大きさからして生後2年以下であり、成体となるのはまだ先のことだったと思われます。
ダイオウイカは極地を除いて世界中の海に生息すると考えられており、吸盤に覆われた8本の腕と2本の触手はいずれも先端が太い棍棒のような形になっています。腕に備わった吸盤の周囲を鋸歯状のキチン質が取り巻き、これが歯の役目を果たします。海岸に打ち上げられるのは極めて稀なことではありますが前例もあり、例えばケープタウンのコーマキー(Kommetjie)という町では1992年に体長9.1mのダイオウイカが発見されています。
今回の個体がなぜ海岸に打ち上げられたのかは謎で、科学者はこの点の分析も進めています。イジコ博物館で無脊椎海洋生物の統括にあたるウェイン・フローレンス氏はデイリーメール紙の取材にこう答えています。「死因が分かるのはコロナウイルスによるロックダウンが解除され、標本を解剖できてからの話です。…ただ標本の保存状態が良いことから、引き網にかかったわけではないと思います。」
reference:iflscience