80年ほど前にガラパゴス諸島で捕獲され、絶滅の危機を救った救世主であるゾウガメのディエゴはまもなく故郷へと帰ります。種の保存プログラムの一環として、彼は何百匹もの子ガメたちをもうけてきたおかげで、ほんのひと握りしかいなかったゾウガメの個体数を数十年かけて2,000匹程に増やしてきました。
ディエゴはエスパニョラ島出身のエスパニョラゾウガメ(学名:Chelonoidis hoodenis)です。およそ80年前に彼は研究のために捕獲され、カリフォルニアのサンディエゴ動物園へと連れてこられました。1960年代には減少するゾウガメを絶滅の危機から救うため繁殖プログラムが立ち上げられました。1970年にはメスが12匹、オスは2匹しかサンディエゴ島におらず、しかも島に分散して住んでいたので繁殖が難しかったのです。
ディエゴは保存プログラムのために他の14匹のエスパニョラゾウガメとともにガラパゴスのサンタクルス島に連れてこられました。そして数百匹の子ガメたちをもうけ、子ガメたちはエスパニョラ島に返されました。そして現在エスパニョラゾウガメの個体数は2万匹にも増え、ディエゴは個体数の増加に大きく貢献したのです。
ディエゴはとりわけ繁殖能力が高くほかのカメよりもはるかに多くの子ガメをもうけました。彼は800匹の子孫を残し現在エスパニョラゾウガメの40%の家長だと言われています。
「1800匹ほどのカメがエスパニョラ島に返され、自然繁殖によって2000匹程に増殖しました。」とガラパゴス自然公園のディレクターであるジョージ・キャリオン氏はAFP通信に話しています。「これは彼らが成長し、繁殖、発展することができることを示しています。」
世界中の絶滅危機にある動物たちと同様に、ガラパゴスゾウガメやほかのガラパゴス諸島の動物たちの減少は人間によるものです。かつて、捕鯨船や海兵、海賊によって100,000もの動物、特に美味しい動物たちが殺されました。なぜなら、長期間水や食料のない船内生活を生き延びるために便利だったからなのです。また、人間は島にネズミや豚、猫などの外来種も持ち込んできたことで在来種の卵を盗み生存競争を強いられたのです。
すでにガラパゴス諸島在来種のカメのいくつかは絶滅していますのでこれ以上減らすわけにはいきません。2012年にはピンタ島最後のカメのロンサム・ジョージが亡くなりました。彼は推定102歳でした。ガラパゴス諸島には優しい巨人が必要なのです。彼らは島の植物を管理し繁殖するのに重要な役割を果たしているのです。彼らが植物を食べ、踏みつけることで種を蒔いているのです。個体数が少ないながらも生態系へ大きな役割を与える生物種をキーストーン種といい、ゾウガメがまさにそれなのです。
故郷を離れてから80年、100歳という高齢になったディエゴはついに3月に故郷へと帰ることとなります。彼は余生を故郷で仲間たちとともに過ごし、おいしい植物をむしゃむしゃと食べゆっくりと暮らすことでしょう。
「私たちがエスパニョラ諸島に帰そうとしているディエゴは種の保存に大きく貢献してきました。彼を元の自然に帰してあげられるということがとても嬉しいです。」とキャリオン氏はAFP通信に語っています。
reference: iflscience