水中のガムシの一種であるマメガムシのことはあまり世に知られていません。甲虫の仲間で魚の孵化場では害虫とされており、湿潤熱帯に適応しています。
しかし、マメガムシはカエルに食べられてもお尻から素早く這い出すという能力のおかげで、甲虫一族の中でも有名人へとのし上がろうとしています。
「私は5種類のカエルの消化器官を通って出口から積極的に逃げ出したことを報告します。」と神戸大学の生態学者、杉浦真治氏は新たな論文の中で述べています。
「成長した甲虫はカエルに容易に食べられてしまいますが、飲み込まれた甲虫の90%はその6時間以内に排泄され、驚くことに排泄された後も生きていたのです。」
ここ最近の中でも最も奇妙な実験になると思いますが、杉浦氏はマメガムシとトノサマガエル(Pelophylax nigromaculatus)を捕まえ、実験室に連れて帰り、カルにマメガムシを食べさせました。そしてカエルの…もう一方の穴から現れるまでにどのくらい時間がかかったのか記録をとりました。
杉浦氏がマメガムシの足に(動きを止めるために)ワックスを塗った時は、消化、排泄されるまでに38時間から150時間かかりました。この小さな虫たちはこの試練に耐え生き残ることはできませんでした。
しかし、マメガムシの運動能力を制御せずにカエルに食べられた時にはかなりの確率でほんの数時間のうちに無傷で出てきたのです。そして1匹の迅速な虫はなんと7分以内に脱出したのです。
試練をくぐり抜けた後も消化器官をくぐり抜けたことなんてなんのその、虫たちは数週間も長生きし、幸せに暮らしました。
通常生き物が捕食動物のお尻から生き延びて出てくる時には受身で、流れに身を任せて出てきます。問題のこの虫はこのような消化器官の旅に適応していて、強い酸性や無酸素状態でもかなりの時間生存できるのです。
しかしこのマメガムシは何もせずにカエルの消化器官を通り過ぎるのをただただ待っているわけではないようです。最初に抜粋した論文で『積極的な逃げ』と言及したように、この小さなマメガムシはカエルの食堂、胃、小腸、大腸を、論文では『出口』と呼んでいた総排出腔に到達するまで力強く進みます。
マメガムシが行き止まりまで到着すると、マメガムシは別のトリックを使って脱出するかもしれない、と杉浦氏は考えています。
「括約筋の圧力で出口がふさがっているので、カエルがその出口を開けるように仕向けることなしにはマメガムシは這い出すことはできません。」と杉浦氏は論文に記しています。
「マメガムシは常にカエルの出口を頭から排泄されます。つまりマメガムシは後腸を刺激してカエルの排便を促していると考えられます。」
しかし全ての水中甲虫がマメガムシのように逃げられるわけではありません。杉浦氏はほかの甲虫やほかのカエルでも実験をしました。
4種のカエルはマメガムシにとってはそれほど問題にはならず、大多数のマメガムシはトノサマガエルの時と同じように無傷で出てきました。
しかし池ガエルにマメガムシの仲間であるキベリヒラタガムシを与えたところ、残念なことにうまくいきませんでした。みんな出口までは来たものの、48時間以上経ってから死んだ状態で排泄されたのです。
今あなたはカエルのお尻からの脱出についてもっと知りたいと思っていることでしょう。しかしまだまだ分かっていないことがたくさんあります。
例えば、マメガムシが脱出するためにカエルの中で実際何をしているのか?他にもお尻の穴から脱出できるマジシャンはいるのか?など謎は深まるばかりです。
時間が解決してくれるでしょうが、これは重要な研究ですのでさらに研究を進めることをお約束します。
この研究は Current Biologyに掲載されたものです。
reference:sciencealert