2021年現在、地球人口はおよそ78億人。
1971年の地球の人口は38億人であったため、50年でほぼ倍増した計算になります。そしてその数は、今この瞬間も増え続けています。
水や石油などの天然資源の枯渇や環境破壊など、すでに現段階の人口で人類には様々な壁が立ちはだかっています。78億人しか生活していない状態で問題が山積みであるにも関わらず、今後さらに人口が増加することは確実視されています。
やがて人口が100億、1000億、1兆と際限なく人間が増えていくのでしょうか。そうなったときに、人類の暮らしはどうなってしまうのでしょうか。そもそも地球に、1兆人もの人間が住むことはできるのでしょうか。
今回は、地球人口が1兆人になるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
世界の人口が増えすぎることは、昔から心配されてきた問題です。すでにおよそ1800年前の西暦200年頃には、テルトゥリアヌスという神学者が、地球の環境が支えきれないほど人口が増えるという懸念を記しています。
参考までに、当時の世界人口は約1億9千万人。現在の世界人口の40分の1程度しかありません。当時の学者たちの心配をよそに、大流行した黒死病の影響を受けた14世紀を除いて、人口は増加の一途をたどります。
19世紀初頭には、世界の人口はおよそ10億人となっていました。当然、その頃でも人口増加に懸念を表明する学者は数多くいました。
その中で最も有名なのが、イギリスの経済学者であるトマス・ロバート・マルサスでしょう。人口の増加は指数関数的、すなわち倍々ゲームで増えていくのに対し、その人口を支える食料の生産量は線形、すなわち一定量でしか増えない。
すると、いつかは増え続ける人口に食料生産が追い付かなくなり、社会の崩壊をもたらす、というのがマルサスの主張でした。
一方で、その後も多くの戦争や、経済危機なども乗り越え、現在の人口は10億人の7倍以上である78億人。2010年代には、多くの科学者たちが、人口増加と環境破壊が人類に対する最大の脅威だとする声明に署名しています。
では、人口は今後いかにして推移していくのでしょうか。将来の人口は、現在の出生率と、将来の出生率の予測値から求めることが可能です。
2019年の国連の試算によると、世界人口は2100年頃に110億人に達し、それ以降人口は増加しないと予想されています。
さて、ここまでご視聴いただきましたが、あることに気が付くかもしれません。はるか昔から、人口増加が人類滅亡のトリガーになるという説が繰り返し唱えられてきましたが、そのような悲劇が実際に起こったことは、未だ一度もないのです。
それには、主に2つの理由があると考えられています。
1つ目は、将来の技術革新を予測するのは非常に困難であるということです。
例えば、食料の増加ペースが人口の増加ペースに追い付かないと主張したマルサスですが、後に空気中の8割を占める窒素を原料としてアンモニアを合成するハーバー・ボッシュ法が発見され、そのアンモニアを利用して肥料を合成する方法が確立されたことで、食料の生産量を大幅に増加することに成功し、危機を回避しています。
現代の例としては、ほんの20年前にはスマートフォンでバイエンスの動画を見ることができるなど誰も想像できなかったことでしょう。
人口は数年で爆発的に増加することはなく、数十年、数百年かけて増加していくため、技術革新するための猶予が存在するのです。
2つ目は、現在使用している資源は将来から前借りしている可能性があることです。現在の人類の生活を維持するためには、地球が1.5個必要である。多くの人は聞いたことがあるフレーズでしょう。
これが正しいか、正しくないかは議論の余地がありますが、地球が資源を回復するより早く人間が資源を使用してしまっているのは確かです。
しかし、地球の資源量もまた予測が非常に難しい分野です。まだ見つかっていない資源や、現在の技術では難しいが技術革新により新たに採掘することのできる資源の存在など、不確定要素が多いためです。
いずれにせよ、今のままでは地球の資源を使用するペースが速いことは間違いないでしょう。人口増加が緩やかになっているため、今後は一人あたりの資源の使用量を減らしていくことが重要だと考えられています。
さて、これまでが現実のお話です。仮に1兆人という、通常の予測をはるかに超えた人口になった場合、どうなるのでしょうか。人口1兆人は、現在の人口78億人のおよそ128倍になります。
今でも地球の資源を使いすぎているという指摘もあるにも関わらず、その100倍以上の人数になってしまうとは、お猿さんですね。
絶望的な数字だと感じるかもしれませんが、社会改革と技術革新により、地球に1兆人は住むことができるとする研究も少数ながら存在します。逆に言えば、現段階の社会構造や技術水準では、人類は大混乱に陥るということになります。
現在の地球で、人口が1兆人になった場合に何が起こるのか、その一端を紹介しましょう。
まずは、人口密度から見ていきます。地球の陸地面積は、およそ1億5千万平方km。地球の人口を陸地面積で割れば、単純に地球全体の平均人口密度が計算できます。現在の78億人の場合は、およそ1平方kmあたり52人。
参考までに、これは日本で過疎地とされている人口密度の平均とほぼ同じです。砂漠や熱帯雨林、南極大陸など人類が住むのに適していない陸地も多いため、全体の人口密度は非常に低いものとなります。
それに対して、人口1兆人では平均の人口密度は1平方kmあたりおよそ6700人。日本で例えると、政令指定都市の名古屋市やさいたま市に匹敵する人口密度となります。
当然、サハラ砂漠のど真ん中や南極付近なども含めて、平均して現在の都市部と同じ人口密度ということになります。そのため、ほとんどの人類は高層ビルでの生活することを余儀なくされることでしょう。
さらに、1兆人分の食料や水も確保しなければなりません。人口78億人のこの世界においても、8億人が食料不足、22億人が安全な飲料水を得ることができないと推定されています。人口1兆人においては、この問題はより顕著になることは間違いありません。
また、食料も高層ビルで育てられることになるでしょう。現在見られるような農場では、場所の取りすぎとなるためです。
また、あらゆる肉が食卓から消滅する可能性も高いです。例えば、1kgの牛肉を生産するためには25kgの穀物と、15000リットルの水を必要とします。
すでに食料と水が逼迫(ひっぱく)しているのに、肉の元となる動物を育てる余裕は、人類にはないでしょう。
動物と言えば、人間以外の生命にとっては非常に厳しい環境になると予想されます。現在においても、大量絶滅の真っ只中と言われるほど、地球上で生命が絶滅するスピードが早いことが知られています。
一説によれば、絶滅のスピードは6500万年前に恐竜が大量絶滅したときと同じか、それ以上。
人口1兆人の世界では、人間が住む場所を確保するための環境破壊、食料を確保するための乱獲、地球温暖化などの影響により、新たな生物に進化するより早く、多くの生物が絶滅してしまうかもしれません。
また、食するものも昆虫などが中心となっている可能性もあります。さらに、人類が生活するためのエネルギーを得る方法や、排出するゴミや二酸化炭素などの物質を処理する方法も必要です。
以前のバイエンスで紹介したようにゴミを太陽や火山に処理してもらうのは現実的ではありません。
1兆人分が生活できるだけのエネルギーだけでなく、排出物などを処理するためにもエネルギーが必要であり、残った地球表面は太陽光発電システムなどで埋め尽くされてしまうでしょう。
それでもエネルギーを極力節約する必要もあり、人類は非常に窮屈な生活を強いられます。
地球上に残されたのは、陸地を覆いつくす高層ビル群と発電所、そして高層ビルに住む不自由な生活を営む人間たち。現在の技術で考えられる人口1兆人の世界は、あまりにも無機質なものと化しているでしょう。
とはいえ、この世界は地球だけではありません。例えば、月面には1グラムで石炭40トンに匹敵するエネルギーを放出するヘリウム3という物質が100万トンも存在しています。
これは現在の地球全体に1万年間にわたりエネルギーを供給できる量と考えられています。覚悟を決めた者たちが海の向こう側へと旅に出た大航海時代のように、この広い宇宙を探索する大宇宙時代がやってくることは間違いないでしょう。